「とりあえずマルチビタミンを飲んでおけば安心」——そう考えている方は多いのではないでしょうか。実際、マルチビタミンは世界で最も売れているサプリメントの一つです。しかし、2024年に発表された約39万人を対象とした大規模研究は、その常識を覆す結果を示しました。
この記事では、最新のエビデンスをもとに、マルチビタミンが「本当に必要な人」と「飲んでも意味がない人」を明確にします。
結論:健康な成人には死亡率低下の効果なし
2024年6月、米国国立がん研究所(NCI)の研究チームがJAMA Network Openに発表した大規模コホート研究(Loftfield et al., 2024, 約39万人、追跡期間20年以上)は、衝撃的な結論を導きました。
マルチビタミンを毎日摂取しても、全死因死亡率は低下しない。
この研究は、NIH-AARPダイエット・健康研究、農業健康研究、前立腺・肺・大腸・卵巣がんスクリーニング試験の3つの大規模前向きコホートを統合分析したもので、年齢、性別、BMI、喫煙歴、食事の質、運動習慣など多数の交絡因子を調整した上での結果です。
米国予防医学専門委員会(USPSTF)の見解
この結果は、2022年にJAMAに掲載された米国予防医学専門委員会(USPSTF)の勧告(被引用232回)とも一致しています。USPSTFは、84件のRCT(ランダム化比較試験)を含む系統的レビューに基づき、以下の結論を出しました。
・ビタミン・ミネラルサプリメントは、がん、心血管疾患、死亡の一次予防にほとんど効果がない
・β-カロテンサプリメントは、喫煙者において肺がんリスクを増加させる
・ビタミンEサプリメントは、心血管疾患やがんの予防に効果がない
つまり、「病気を予防するためにマルチビタミンを飲む」という行為は、現時点のエビデンスでは支持されていません。
ただし、認知機能には効果あり?
一方で、マルチビタミンに全く効果がないわけではありません。
ハーバード大学などが主導した大規模RCT「COSMOS試験」のサブスタディ(American Journal of Clinical Nutrition, 2023年)では、65歳以上の高齢者がマルチビタミンを毎日摂取した場合、記憶力や全般的認知機能が改善することが示されました。研究チームは、マルチビタミンが認知老化を約2年分遅らせる可能性があると推定しています。
この結果は3つの独立したサブスタディで再現されており、信頼性は比較的高いと考えられます。ただし、認知症の「治療」効果が示されたわけではなく、あくまで「予防的な遅延効果」である点に注意が必要です。
マルチビタミンが「必要な人」
最新のエビデンスを総合すると、マルチビタミンが有用な可能性がある人は以下のグループです。
1. 妊婦・妊活中の女性
葉酸は神経管閉鎖障害の予防に不可欠であり、妊娠前から400μg/日の摂取が推奨されています。鉄分やビタミンDも妊娠中に不足しやすい栄養素です。Weilan et al.(2025年, Ageing Research Reviews)のラピッドレビューでも、妊娠中のマルチビタミン摂取は低出生体重児リスクの低下と関連していました。
2. 高齢者(65歳以上)
COSMOS試験の結果から、認知機能の維持に寄与する可能性があります。また、加齢に伴う栄養吸収能力の低下を補う意味でも検討の価値があります。
3. 食事制限がある人
ビーガン・ベジタリアン(ビタミンB12が不足しやすい)、食物アレルギーで特定の食品群を避けている人、極端なダイエット中の人などは、食事だけでは必要な栄養素を十分に摂取できない可能性があります。
4. 特定の疾患・状態にある人
吸収不良症候群、胃切除後、慢性的な下痢がある人などは、医師の指導のもとでサプリメントが必要になる場合があります。
マルチビタミンが「不要な人」
逆に、以下に該当する人はマルチビタミンの恩恵を受けにくいと考えられます。
・バランスの良い食事をしている健康な成人
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に基づいた食事ができている場合、追加のサプリメントは不要です。
・「保険」としてなんとなく飲んでいる人
39万人のコホート研究が示す通り、死亡率低下の効果はありません。
・がんや心臓病の予防目的で飲んでいる人
USPSTFの勧告により、この目的でのマルチビタミン摂取は推奨されていません。
マルチビタミンの注意点
マルチビタミンは「害がない」と思われがちですが、いくつかのリスクがあります。
過剰摂取のリスク
脂溶性ビタミン(A、D、E、K)は体内に蓄積されるため、過剰摂取で健康被害が生じる可能性があります。特にビタミンAの過剰摂取は、頭痛、吐き気、肝障害の原因になります。
β-カロテンと喫煙者
USPSTFの勧告でも明記されている通り、β-カロテンサプリメントは喫煙者の肺がんリスクを増加させます。喫煙者はβ-カロテンを含むサプリメントを避けるべきです。
薬との相互作用
ビタミンKは抗凝固薬(ワルファリン)の効果を減弱させます。鉄分やカルシウムは一部の抗生物質の吸収を阻害します。服薬中の方は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
「サプリを飲んでいるから大丈夫」という油断
最も大きなリスクは、サプリメントに頼ることで食事や生活習慣の改善がおろそかになることです。栄養素は食品から摂取するのが最も効率的であり、サプリメントはあくまで補助的な位置づけです。
まとめ:まずは食事を見直そう
マルチビタミンに関する最新のエビデンスをまとめると、以下のようになります。
・健康な成人が死亡率低下やがん・心血管疾患予防の目的で摂取するエビデンスはない
・高齢者の認知機能維持には効果がある可能性がある
・妊婦、食事制限がある人、特定の疾患がある人には有用な場合がある
・β-カロテンは喫煙者で有害、脂溶性ビタミンの過剰摂取にも注意が必要
「とりあえずマルチビタミン」ではなく、まずは自分の食事内容を見直し、不足している栄養素があれば、その栄養素に特化したサプリメントを検討する——これが、現時点で最もエビデンスに基づいたアプローチです。
気になる症状がある場合は、血液検査で栄養状態を確認した上で、医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。
参考文献
・Loftfield E et al. “Multivitamin Use and Mortality Risk in 3 Prospective US Cohorts.” JAMA Network Open, 2024; 7(6): e2418729.
・US Preventive Services Task Force. “Vitamin, Mineral, and Multivitamin Supplementation to Prevent Cardiovascular Disease and Cancer.” JAMA, 2022; 327(23): 2326-2333. PMID: 35727272.
・Yeung LK et al. “Multivitamin Supplementation Improves Memory in Older Adults: A Randomized Clinical Trial.” Am J Clin Nutr, 2023; 118(1): 273-282.
・Weilan W et al. “Multivitamin and mineral use: a rapid review of meta-analyses on health outcomes.” Ageing Research Reviews, 2025.
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
・厚生労働省eJIM「マルチビタミン/ミネラル(MVM)サプリメント」
免責事項: この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、医療行為の推奨ではありません。サプリメントの使用を開始・中止する際は、必ず医師や薬剤師にご相談ください。
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