はじめに:太っているのに栄養失調?
「毎日しっかり食べているのに、なぜか疲れやすい」
「体重は標準なのに、健康診断で引っかかる」
「ダイエットしているのに、体調が悪くなる」
こんな経験はありませんか?
実は、現代人の多くが「隠れ栄養失調」という状態に陥っています。カロリーは十分に摂取しているのに、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの必須栄養素が不足している状態です。
さらに、BMI(体格指数)が正常範囲でも、体脂肪率が高い「隠れ肥満」も増えています。これらは表裏一体の問題で、どちらも「カロリーの質」が原因です。
この記事では、隠れ栄養失調と隠れ肥満の実態、そして今日からできる対策を科学的根拠に基づいて解説します。
隠れ栄養失調とは
定義
隠れ栄養失調とは、カロリー摂取は十分(または過剰)だが、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの必須栄養素が不足している状態を指します。
従来の栄養失調とは異なり、見た目では分からないため「隠れ」と呼ばれます。
従来の栄養失調 vs 隠れ栄養失調
| 項目 | 従来の栄養失調 | 隠れ栄養失調 |
| カロリー | 不足 | 十分(または過剰) |
| 栄養素 | 不足 | 不足 |
| 見た目 | 痩せている | 標準〜太っている |
| 原因 | 食糧不足 | 加工食品・偏った食事 |
| 症状 | 体重減少、筋力低下 | 疲労、集中力低下、免疫力低下 |
| リスク | 飢餓、感染症 | 生活習慣病、慢性炎症 |
なぜ起こるのか?
隠れ栄養失調が起こる主な原因は、「カロリーは安いが、栄養は高い」という現代の食環境です。
| 食品の種類 | カロリー | 栄養素 | 価格 | 例 |
| 加工食品 | 高い | 少ない | 安い | カップ麺、菓子パン、スナック菓子 |
| 自然食品 | 適切 | 豊富 | 高い | 野菜、果物、魚、ナッツ |
加工食品は、カロリーが高く、価格が安いため、手軽に満腹感を得られます。しかし、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの必須栄養素がほとんど含まれていません。
一方、自然食品(野菜、果物、魚、ナッツなど)は、栄養素が豊富ですが、価格が高く、調理に手間がかかります。
この結果、カロリーは十分に摂取しているのに、栄養素が不足するという状態が生まれます。
もう一つの問題:隠れ肥満
隠れ栄養失調と同じく、現代人には「隠れ肥満」という問題もあります。
隠れ肥満とは
隠れ肥満(Normal Weight Obesity)とは、BMI(体格指数)が正常範囲(18.5-24.9)でありながら、体脂肪率が高い状態を指します。
| 項目 | 基準 |
| BMI | 18.5-24.9(正常範囲) |
| 体脂肪率 | 男性25%以上、女性30%以上 |
見た目は標準体型でも、内臓脂肪が多く、健康リスクが高い状態です。
なぜBMIではなく体脂肪率が重要なのか?
BMIの限界:
1.筋肉と脂肪を区別できない
•筋肉質な人:BMI高いが体脂肪率低い → 健康リスク低い
•隠れ肥満の人:BMI正常だが体脂肪率高い → 健康リスク高い
2.内臓脂肪を反映しない
•内臓脂肪が多いと、心血管疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームのリスクが高い
•BMIだけでは内臓脂肪の量を判断できない
3.アジア人には不適切
•アジア人は、欧米人と比べて同じBMIでも体脂肪率が高い傾向
•BMI25以下でも健康リスクが高い
隠れ肥満の健康リスク(科学的根拠)
隠れ肥満は、肥満と同等の健康リスクを持つことが科学的に証明されています。
| 健康リスク | リスク増加 | 出典 |
| メタボリックシンドローム | 約4倍 | Romero-Corral et al., 2010 |
| 心血管疾患による死亡(女性) | 2.2倍 | Romero-Corral et al., 2010 |
| 全身性炎症 | 3倍以上 | 日本の研究, 2025 |
| 2型糖尿病 | 高い関連性 | Ma et al., 2025 |
| 高血圧 | 高い有病率 | Romero-Corral et al., 2010 |
| 冠動脈疾患 | 高い関連性 | Ma et al., 2025 |
重要なポイント:
•BMI正常でも、体脂肪率が高いと、メタボリックシンドロームのリスクが約4倍
•女性の場合、心血管疾患による死亡リスクが2.2倍
•全身性炎症リスクが3倍以上に増加
隠れ栄養失調と隠れ肥満の共通点
| 共通点 | 説明 |
| 原因 | 「カロリーの質」が低い食事 |
| 見た目 | 見た目では分からない |
| 健康リスク | 慢性炎症、生活習慣病 |
| 対策 | 栄養素密度の高い食事 |
どちらも、「カロリーは足りているが、栄養が足りていない」という状態から生じます。
隠れ栄養失調の症状
隠れ栄養失調は、見た目では分かりませんが、身体的・精神的な症状として現れます。
身体的な症状
| 症状 | 不足している可能性のある栄養素 |
| 疲労感・だるさ | 鉄、ビタミンB群、マグネシウム |
| 免疫力の低下 | ビタミンC、ビタミンD、亜鉛 |
| 肌荒れ・乾燥 | ビタミンA、ビタミンE、オメガ3 |
| 髪のパサつき・抜け毛 | タンパク質、鉄、亜鉛、ビオチン |
| 爪が割れやすい | タンパク質、鉄、カルシウム |
| 筋力低下 | タンパク質、ビタミンD、カルシウム |
| 骨密度の低下 | カルシウム、ビタミンD、マグネシウム |
精神的な症状
| 症状 | 不足している可能性のある栄養素 |
| 集中力の低下 | 鉄、ビタミンB群、オメガ3 |
| イライラ・不安 | マグネシウム、ビタミンB6、オメガ3 |
| うつ症状 | オメガ3、ビタミンD、ビタミンB群 |
| 睡眠障害 | マグネシウム、トリプトファン、ビタミンB6 |
日本人が不足しがちな栄養素
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、日本人が特に不足している栄養素は以下の通りです。
| 栄養素 | 不足している割合 | 主な働き | 豊富に含まれる食材 |
| 食物繊維 | 約90% | 腸内環境改善、血糖値安定 | 野菜、果物、全粒穀物、豆類 |
| カルシウム | 約70% | 骨・歯の形成、筋肉収縮 | 乳製品、小魚、緑黄色野菜 |
| 鉄 | 約50%(特に女性) | 酸素運搬、エネルギー生成 | 赤身肉、レバー、ほうれん草、大豆 |
| ビタミンD | 約80% | カルシウム吸収、免疫調整 | 魚(サーモン、サバ)、きのこ、卵黄 |
| マグネシウム | 約60% | エネルギー代謝、神経伝達 | ナッツ、種子、全粒穀物、緑黄色野菜 |
| オメガ3脂肪酸 | 約70% | 抗炎症、脳機能、心血管保護 | 青魚、亜麻仁油、チアシード、くるみ |
| ビタミンB群 | 約50% | エネルギー代謝、神経機能 | 全粒穀物、肉類、卵、豆類 |
「カロリーの質」という考え方
隠れ栄養失調を防ぐには、「カロリーの量」ではなく「カロリーの質」を重視する必要があります。
同じカロリーでも「質」で選ぶ
| 比較項目 | 低品質な選択 | 高品質な選択 |
| 朝食(500kcal) | 菓子パン2個 + 缶コーヒー | 全粒パン + 卵 + サラダ + ヨーグルト |
| 昼食(700kcal) | カップ麺 + おにぎり | 焼き魚定食(ご飯、味噌汁、サラダ付き) |
| 間食(200kcal) | ポテトチップス1袋 | ナッツ30g + りんご半個 |
| 夕食(800kcal) | コンビニ弁当 | 鶏胸肉のグリル + 野菜炒め + 玄米 |
ポイント:
•カロリーは同じでも、栄養素の量が大きく異なる
•高品質な選択は、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富
•低品質な選択は、糖質と脂質が多く、栄養素が少ない
比較1:コンビニ弁当 vs 和定食
| 項目 | コンビニ弁当 | 和定食(焼き魚定食) |
| カロリー | 700kcal | 700kcal |
| タンパク質 | 20g | 35g |
| 脂質 | 30g | 15g |
| 炭水化物 | 90g | 90g |
| 食物繊維 | 3g | 10g |
| ビタミンD | ほぼ0 | 豊富(魚) |
| オメガ3 | ほぼ0 | 豊富(魚) |
| カルシウム | 少ない | 豊富(小魚、野菜) |
| 添加物 | 多い | 少ない |
| 価格 | 500円 | 800円 |
結論:
•カロリーは同じでも、和定食の方が栄養素が豊富
•コンビニ弁当は、糖質と脂質が多く、栄養素が少ない
•価格は和定食の方が高いが、健康への投資と考えれば妥当
比較2:朝食の選択
| 項目 | 菓子パン2個 + 缶コーヒー | 全粒パン + 卵 + サラダ + ヨーグルト |
| カロリー | 500kcal | 500kcal |
| タンパク質 | 8g | 25g |
| 脂質 | 20g | 15g |
| 炭水化物 | 70g | 50g |
| 食物繊維 | 2g | 8g |
| ビタミンB群 | 少ない | 豊富(卵、全粒パン) |
| カルシウム | 少ない | 豊富(ヨーグルト) |
| 添加物 | 多い | 少ない |
| 満腹感 | 低い(すぐに空腹) | 高い(長時間持続) |
結論:
•カロリーは同じでも、全粒パン + 卵 + サラダ + ヨーグルトの方が栄養素が豊富
•菓子パンは、糖質が多く、血糖値が急上昇→急降下するため、すぐに空腹になる
•全粒パン + 卵は、タンパク質と食物繊維が豊富で、満腹感が長時間持続比較3:昼食の選択
| 項目 | カップ麺 + おにぎり | 焼き魚定食 |
| カロリー | 700kcal | 700kcal |
| タンパク質 | 15g | 35g |
| 脂質 | 25g | 15g |
| 炭水化物 | 100g | 90g |
| 食物繊維 | 2g | 10g |
| ビタミンD | ほぼ0 | 豊富(魚) |
| オメガ3 | ほぼ0 | 豊富(魚) |
| 塩分 | 5g以上 | 2-3g |
| 添加物 | 多い | 少ない |
結論:
•カロリーは同じでも、焼き魚定食の方が栄養素が豊富
•カップ麺は、塩分が非常に多く、高血圧のリスクが高い
•焼き魚定食は、オメガ3、ビタミンD、タンパク質が豊富で、健康的
隠れ栄養失調を防ぐ5つの習慣
1. 「まごわやさしい」を意識する
日本の伝統的な食事の知恵を活かした、栄養バランスの良い食事の基本です。
| 文字 | 食材 | 主な栄養素 | 1日の目安量 |
| ま | 豆類(大豆、納豆、豆腐) | タンパク質、食物繊維、イソフラボン | 1品以上 |
| ご | ゴマ・ナッツ・種子類 | オメガ3、ビタミンE、マグネシウム | 大さじ1〜ひとつかみ |
| わ | わかめ・海藻類 | ミネラル、食物繊維、ヨウ素 | 1品以上 |
| や | 野菜(緑黄色野菜) | ビタミン、ミネラル、食物繊維 | 350g以上 |
| さ | 魚(特に青魚) | オメガ3、ビタミンD、タンパク質 | 週3回以上 |
| し | しいたけ・きのこ類 | ビタミンD、食物繊維、βグルカン | 1品以上 |
| い | いも類(さつまいも、じゃがいも) | 食物繊維、ビタミンC、カリウム | 1品以上 |
2. 加工度の低い食品を選ぶ
加工度が低い食品ほど、栄養素が豊富です。
| 加工度 | 食品例 | 栄養素 | 推奨度 |
| 低 | 野菜、果物、魚、肉、卵、ナッツ | 豊富 | ◎ |
| 中 | 全粒パン、玄米、冷凍野菜、缶詰(無添加) | やや豊富 | ○ |
| 高 | 白米、白パン、加工肉、スナック菓子、カップ麺 | 少ない | △ |
ポイント:
•加工度が低い食品は、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富
•加工度が高い食品は、糖質、脂質、塩分、添加物が多い
3. 彩りを意識する
食事の彩りを意識すると、自然と栄養バランスが整います。
| 色 | 食材例 | 主な栄養素・効果 |
| 赤 | トマト、パプリカ、いちご | リコピン、ビタミンC(抗酸化) |
| 橙 | にんじん、かぼちゃ、みかん | βカロテン、ビタミンA(視力、免疫) |
| 黄 | バナナ、レモン、卵黄 | ビタミンB6、ビタミンC、ルテイン |
| 緑 | ほうれん草、ブロッコリー、キウイ | 葉酸、ビタミンK、食物繊維 |
| 紫 | ブルーベリー、なす、紫キャベツ | アントシアニン(抗酸化、抗炎症) |
| 白 | 大根、カリフラワー、玉ねぎ | 硫黄化合物、食物繊維 |
| 黒 | きのこ、海藻、黒豆 | ビタミンD、ミネラル、食物繊維 |
ポイント:
•1食に5色以上を目指す
•彩りが豊かな食事は、ファイトケミカル(植物由来の抗酸化物質)が豊富
4. 間食を「栄養補給」に変える
間食を「栄養補給」の機会と捉えることで、隠れ栄養失調を防げます。
| 低品質な間食 | 高品質な間食 | 栄養素 |
| ポテトチップス | ナッツ30g | オメガ3、ビタミンE、マグネシウム |
| チョコレート菓子 | ブラックチョコ4かけ | ポリフェノール、マグネシウム |
| 菓子パン | 全粒パン + アボカド半個 | 食物繊維、オレイン酸、カリウム |
| 清涼飲料水 | ヨーグルト + ベリー | タンパク質、カルシウム、アントシアニン |
| スナック菓子 | チーズ + りんご | タンパク質、カルシウム、食物繊維 |
ポイント:
•間食は「栄養補給」の機会と捉える
•高品質な間食は、栄養素が豊富で、満腹感が持続する
5. カロミルで自分の栄養状態をチェック
カロミルは、食事を記録するだけで、栄養素の摂取量を自動計算してくれるアプリです。
使い方:
1.食事を写真で記録(AI が自動で食材を認識)
2.栄養素の摂取量を確認(PFC、ビタミン、ミネラル、食物繊維など)
3.不足している栄養素を把握
4.次の食事で補う
メリット:
•自分の栄養状態を「見える化」できる
•不足している栄養素が一目で分かる
•食事改善のモチベーションが上がる
まとめ
隠れ栄養失調と隠れ肥満は表裏一体
•隠れ栄養失調:カロリーは足りているが、栄養素が不足
•隠れ肥満:BMI正常だが、体脂肪率が高い
•共通の原因:「カロリーの質」が低い食事
科学的に証明された健康リスク
•メタボリックシンドロームのリスクが約4倍
•女性の心血管疾患による死亡リスクが2.2倍
•全身性炎症リスクが3倍以上
今日からできる5つの習慣
1.「まごわやさしい」を意識する
2.加工度の低い食品を選ぶ
3.彩りを意識する
4.間食を「栄養補給」に変える
5.カロミルで自分の栄養状態をチェック
最も重要なこと
「カロリーの量」ではなく「カロリーの質」を重視する
同じカロリーでも、栄養素が豊富な食品を選ぶことで、隠れ栄養失調と隠れ肥満を防ぎ、健康的な身体を維持できます。
「栄養完全ガイド」シリーズ全6回
•第6回:目的別食品ガイド|肉体・精神・社会的健康のための食事
7.特別編①: 質の良い脂質【特別編①】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
[2] World Health Organization “Micronutrients” 2023.
[5] Ma M, et al. “Association between normal weight obesity and comorbidities” PLOS ONE 2025.
[6] CareNet「正常BMIでも体脂肪率が高いと全身性炎症リスクが3倍以上に」2025年12月4日.
[7] 国立がん研究センター「肥満指数(BMI )と死亡リスク」


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